毎年年初恒例で日本人が大好きな箱根駅伝を題材とした小説。
前半
物語は中心人物となる二人のあまり褒められたものではない運命的な出会いから始まる。
それはまだいいとして、序盤の展開には相当が無理がある。
とある大学のオンボロ学生寮に住む10人が、そのうちの1人の策謀?により箱根駅伝を目指すことになる。
しかも、10人のほんとんどが陸上とは無関係、なかには運動さえろくにしたこともないようなオタクっぽい人も。
たったの10人、補欠もいな状況で、それまで人生の多くの時間をかけて陸上に取り組んできた百戦錬磨のエリート中のエリートが集まってくる強豪大学と張り合おうというのだから…
読んでて「いくらなんでもそんなのありえない」と叫びたくなる。
だいたい、10人全員が箱根駅伝を目指そうという思いに至るまでの過程があっさりしすぎで、「何でそうなるのと」到底受け入れられない。
あまりにもリアリティーに欠けて感情移入できない..
毎年箱根駅見てる人だったらわかると思いますが、シード権を持ってない大学は、まずは予選会にエントリーして、予選会で本線出場の切符を掴み取る必要がある。
物語は予選会のくだりに入り(一応苦戦はするんだけど)当然のように予選突破し、本線出場を決める。
後半
後半は、そんな無茶苦茶なチームが挑む箱根駅伝本線の模様が、本書のほぼ半分のスペースを割いて描かれる。
さて、さて、ここまでボロカス書いてますが、
この後半の描写が素晴らしい!
生まれも育ちも走る力もバラバラの10人、それぞれのランナーの思い、それぞれの走る意味、熱い想いがひしひしと伝わってき、ランナーの走る姿が、読むものを引きつけて離さない。
お正月でテレビで外から見てるだけでも感動するのに、その何倍も、何倍も、まるで自分がそこで走ってるかと思うような錯覚におちいり、箱根駅伝を疑似体験しているよう。
ページめくる手が止まらない。
読了後は、前半のありえない設定がどうでもよくなってしまう。
前半と後半でガラリと印象が変わってしまう。そんなお話でした。